これまで仕事柄退職意向を多く聞いて参りました。その中で一番多いのが、辞めたいと言う理由と辞めたいと思ったきっかけが嚙み合っていない事です。こちらが少し深く聞きますと、実際の理由が出てきます。なぜ人は始めに本当の理由を言えないのでしょうか?ここではその心理を書いてみたいと思います。
目次
□人はなぜ退職届を出すときに本当の理由を言えないのか?その心理とは
もともと退職届を出す際は予め会話を想定するものですよね。受ける方は『お話があります』と言われるまで特には用意しない事がほとんどです。いざその時間になったら先ず、退職希望者から会話を始めます。その時にどう言うかを事前に考えて来ているわけです。さて、その内容を聞きまして、直ぐに納得できることはどれくらいあるでしょうか?私の経験では、ほとんどありませんでした。なぜそのような矛盾が起こるのでしょうか、いくつか紹介してみたいと思います。
・揉めずに辞めたいので表面だけ奇麗に伝えたい
誰しも最後の最後まで揉めて辞めたくありません、すんなりと辞めるためには表面だけでも繕って辞職の意向を伝えたいと思うものです。中には辞めるのだからと、言いたい事をズバッと言って辞める方もいらっしゃいますが、ほとんどの方はそうしたくても出来ないのです。それまでに蓄積された嫌な想いがあった場合、最後の最後までしんどい想いをしたくないという気持ちで、真相を語ることなくすんなりと受け入れられると思う理由を言うのです。
・いい評価のまま辞めたい・次に生かすために評価を下げたくない
全く違う職種に転職するのであれば、何の問題も無く考える必要はありませんが、同じ職種で転職を考えている場合、どこで繋がりが出るか分からない為、評価を下げるような言動が出来ないという事もあります。世間は狭いと言われるほど、どこで誰が繋がっているか分かりません、キャリアを考えるのであれば評判を気にするのは当然です。どんな理由があったにせよ、次の仕事の事を考えて本当の事を言わず、奇麗に辞めたいという考えになります。
・辞職の届を出す相手が原因・上司のお気に入りが原因で退職
辞表を提出するその相手こそが退職の原因であったり、辞めるきっかけになった人が上司のお気に入りだったり、本当の事を言いづらい相手が原因の場合。これは確かに本当の理由は言いづらいですね。なんとか他の事が原因で辞めると言わざるを得ない状況になる事でしょう。実際に私も経験がありますし、聞いたこともあります。相手はなんとなく察している事がほとんどですが、気付いていないのかどうなのか、平然とされている方もいます。退職に繋がった相手が目の前に居るというパターンも本音を言えない理由となりそうです。
・単に長続きしない
中には何が原因という訳ではなく、本人がそもそも一か所で長続きしないタイプの方もいらっしゃいます。でも本人は気付いておらずあれこれを原因を言いますが、そのような方が言う原因というものは、どの会社でもあり得る内容である事が多く、それだと今後も辞め続けていくのだなと思います。本当の理由は自分の長続きしない性格、もしくは飽き性な性格から故なのですが、自分でも気づいていないので本来の原因とは違う事を言うようです。
◇今後の為に本音を言って欲しい場合どうすればいい?
会社としては、なるべく本当の事を言って貰えた方が今後の会社にとっていいですよね。改善できることがあれば改善し、より良い環境を作り離職を減らす事が出来る訳ですから。ところが、先程のように本音を隠され、それに気づかずに進めてしまった場合、会社としての成長が止まってしまいます。では、どのようにして本音を引き出し、会社の発展に役立てられるのでしょうか?
・相手のペースに合わせて話を聞く
何が原因なのか、本当のところはどう思っていたのか、いつから退職を考えていたのかなど聞きたいことは沢山あるのは分かります。でも相手は元々本音を言うつもりが無く来ていて、そこに今後の為に本音を聞かせてほしいとお願いするのであれば、本人に頭の中を整理整頓する時間を与えなければいけません。先に記したように、相手はここに来るまでに自分が発言する内容を考えてきています、それを全く違う内容に変えてもらうわけですから、時間がかかりますね。相手が考えている間中、せかす様な言葉をかけると尚更言いづらくなってしまいます。
・興味本位ではなく本当に今後に生かせる仕組みを創る
今話をしていて退職する方には見えないかもしれませんが、現在働いている人はその退職者に対して、どのような対応をしたのかというのは見えています。〇〇さんが嫌いなんだって!など、今後の為と言いながら聞き出した話をただの噂話にしてしまっては、興味本位で聞き出しているだけで現在働いている人から見ると、自分は本当の事を言うのを止めようと思います。このように聞き出したのであれば本当に今後に生かさなければ意味がありません。真摯に聞いた内容を仕組みなのか人事なのかを判断し、人の教育や仕組みの中のポイントの見直しに役立てていれば、辞めていく方も最後にこの会社の為にと力になってくれるでしょう。
・普段から信頼関係を作っておく
誰でも辞める時にしか顔を出さない人に本音など言えるはずがありません。知らない方が言いやすいという方もいらっしゃるかもしれませんが、少ない方だと思います。普段から話を聞いていて、信頼関係があれば本当の事を聞かせてほしいと言うだけで、すんなりと本当の理由を言ってくれるでしょう。ただし、普段に信頼関係があるとこちら側だけが自己判断で思っていてはいけません。双方にその認識があることが大切です。
・相手を決めつけて話をしない
退職の意向を聞くときだけでなく、普段から人の話を最後まで聞かず途中で決めつけて答えてくるような人には本音は言えません。相手の事を分かっているとアピールしたいのでしょうが、逆効果になります。この様な方は決めつけた内容が合っていない事が多く、相手からすると変に答えると決めつけられて面倒な事になると印象に残ってしまいます。決めつけている本人は気づいていないかもしれませんが、話をしている相手から、『いえ、そうではなく』とか『いえそういう事ではありません』など、否定された経験がある方は決めつけている可能性があります。簡単にこういう事でしょう?などと言わず、最後まで相手の言いたいことを聞きましょう。
最後に
一緒に働いている人が去ってしまうのは寂しいですし、残念に思う事があります。本人のスキルアップや成長、結婚・出産などおめでたい事であれば手放しで喜べることですが、会社に原因がある場合早急に改善したいものです。大きい会社であれば仕方がない部分もあるでしょうが、中小の会社様であれば離職を減らすことは会社にとっては大きな課題となります。昨今求人にかかる時間と料金は大変なものです、一人一人を大切にしているつもりでも、従業員全員が同じとは限りません。どこに問題があるのかは退職者が教えてくれることも多いのです。うちに合わないから辞めるのだと簡単に思わずに、会社の為に退職者の声を聞いてみてはいかがでしょうか?